うちキライや、人間
わかっとる
死神も、キライや
わかっとる
家族
「飯はまだかよ!?」
結界の中の空間にいる数人の中から、空腹で今にも倒れこみそうな男が悲痛の声を発していた。
「うるさい。喋るなボケ」
その声を鬱陶しく思った女は、視線を本に向けながらも冷徹な言葉を浴びせる。
「いや、お前は腹減らねぇのかよ!……てかあいつら何時間寄り道してんだ」
「だったら拳西お前見てこいよ。どうせひよ里と真子のことだから道端で喧嘩でもしてんだろ」
「俺はもう腹減って動けねぇ。このままじゃ死ぬ……」
「なら死にな」
「てめぇは黙ってエロ本でも読んどけ!」
時々暴言を吐くリサを片目で見つつ、拳西はため息を吐いていた。いつものことだと思いながら、よく飽きないものだと感心してしまう。
現在の時間は昼過ぎの3時。今日の担当でもあるひよ里と真子が昼飯を買いにいってから、何時間も経過している。人一倍食う拳西はすでに空腹で苛立っていた。そんな拳西を何とかラブがなだめる。
「そうかっかするなよ。怒鳴ってたら余計腹減るぞ」
「だけどな……白だって空腹で倒れてんじゃねぇか」
拳西は近くでグッタリと倒れている白に視線をやると、ラブもつられるようにそっちを見た。
「うぅ……お腹減ったよ〜」
「そろそろ着く頃だとは思いますガネ……」
白のそばでは鉢玄が冷静に分析をしていた。あの二人を買出しに行かせると絶対に何かあるのはいつものことなので、遅くてももうすぐ帰ってくるころなのだろう。口には出さずとも結局みんな空腹なのだった。
「っと、そろそろ帰ってきたんじゃない?」
その言葉に全員が入り口に視線を向けた。ローズの言葉の通り、近くに二人の霊圧を感じたからだ。するとタイミング良く、そこへひよ里と真子が帰ってくる。
「飯買ってきたで〜」
「遅ぇんだよ!」
「いつまでかかってんの!」
真っ先に動き出したのは拳西と白だ。一瞬で二人のもとに辿り着き、漁るように飯の入った袋に手を入れていた。
「お、落ち着けや……」
「うるせぇ!だいたいいつもいつも遅すぎんだよ!」
拳西は怒りをぶつけようと、二人に当り散らす。
「そりゃひよ里に言えや!店に行く度こいつはワガママ言い放題なんやから」
「何やて!?ワガママ言うのはそっちやろ!」
「何言うてんねん!俺がいつワガママ言った!」
「いつも言うてるやろ、このハゲ!」
「なっ!?俺のどこがハゲなんじゃ!」
いつもの様に喧嘩を始める二人を放っておいて、残りのみんなも飯を手に取り始めた。しかしいつまでも止めない二人に、ローズが仲裁をいれようと間に入ろうとする。
「少し落ち着いて……」
「うっさい!邪魔すんな!」
「邪魔やローズ!」
だが二人に拳と蹴りをいれられ、ローズは呻くようにその場に蹲る。
「うわぁ……痛そうだね……」
「何で僕がこんな目に……」
「そりゃあいつらの間に入るのが悪いんだろ。いつものことなんだから放っときゃいいんだよ」
ラブは飯を口にしながら、暢気に二人を見ていた。それはむしろ面白そうな顔でもある。ローズもそれは分かっているのだが、目の前でそうされては止めにも入りたくなるものだった。
二人の喧嘩はいつしか殴り合いにまで発展し、悪いときでは剣を抜いたり虚化することさえある。とりあえずのとこそこまで行かないので、他のみんなは飯を済ますと思い思いのことをして過ごした。
「何か眠くなってきたよ。ハッちん一緒にお昼寝しよ」
「いえ、ワタシは……」
何か言おうとしたが、いつの間にか白は鉢玄の身体によりかかって寝息をたてていた。少し身勝手な彼女であるが、鉢玄は諦めてそこから動かずにいることにした。
「ローズ、散歩でも行こうぜ。いつまでもそうしてないで立てよ」
「ちょ!ラヴ、引っ張らないでくれ!」
ラブは日課のように、散歩へローズを連れていこうとした。しかし先ほどの攻撃でまだ痛みに耐えていたローズは、強引なラブに引きずかれるようになすがままにされている。
「ほら早くしろよ」
「僕は行くなんて一言も言ってないんだけど……」
そう言いつつも、ラブがローズの言葉を聞いてないことはいつものことだ。結局はラブに引き連れられ、外へと出て行った。
「ローズもあれでよく耐えてるよな……」
ある意味その凄さに拳西は単純に感心していた。しかし隣にいるリサはいつもと変わらず、エロ本を黙々と読み続けている。これについても、ある意味拳西は感心していた。
するとリサが拳西の視線を感じたのか、本から顔を上げる。
「お前も読みたいんか?」
「違ぇよ!」
冗談なのか本気なのか知らないが、拳西は何て返したらいいかも分からないので怒鳴ることしかできなかった。恐らくどっちもあったのだとは思うけれど。
人間からも、死神からも、虚からも外れた存在。
それが仮面の軍勢である彼らだった。
彼らにとって信じられる仲間は、ここにいる者たちだけ
どれほどの長い時を過ごそうとも、仲間がいるから耐えられる
それはもう、家族のように